2008年8月31日
USA 1957-4-20 〜 ケルティック/アイリッシュ ブルーグラス スティール弦ギター フラットピッキング
毎年テキサス州ウィンフィールドで開催されるナショナル・ギター・コンテスト。ギターファンにはお馴染みの、この世界的なギタリストの登竜門のフラットピッキング部門で3度もの優勝歴を持つのが、Steve Kaufman だ。
ジャズピアニストの父とクラシックピアノを学んだ母の元、ニューヨークで生まれた彼は4歳でピアノを弾き始め、さらにはチェロやギターと幅を広げていくのだが、本格的に現在のスタイルでギターに取り組み始めたのは14歳の頃だという。「栴檀は双葉より芳し」とは良く言ったもので、'78・'84・'86年の、前述のウィンフィールド・チャンピオンシップが示すように Doc Watson も絶賛する彼の力量はまさに折り紙つき。よどみなく正確に、そしてフィドルのように軽やかに流れていく Kaufman のギターは、天才 Mark O'connor を彷彿とさせる。しかし音楽的には、生粋のグラッサーな O'connor に比べ、無色透明とでもいおうか、柔軟でより広い音楽ジャンルに対応可能な印象がある。そういえば、彼の活動はインストラクターとして占める割合が多い。同じくフィンガーピッカー講師として有名な Stefan Grossman が、ギタリストとして一級品だけど凄いブルーズメンかというとちょっと違う、ってあたりと似ているかもしれない。Clarence White や Tony Rice よりは David Grier かな、というリスナーなら是非聴くべし。
'94年のソロアルバムで、ジャケットには誇らしく「3 Times National Guitar Champion」と(笑)。通常のブルーグラスコンボの形式で演奏されたものもあるが、サイドギターやマンドリン、ベース等全ての楽器を一人でオーバーダブしたらしい。とはいえコテコテのブルーグラス・アルバムではなく、アイリッシュチューンの「Bryne's Hornpiper」や、サウンド・オブ・ミュージックの「Edelweiss」等も取り上げられ、アルバムを風通しの良い涼やかなものにしている。そういいつつも、聴き処はやはり「The Arkansas Traveler」や「Spider Bit The Baby」「Katie Hill」「Little Rock Gataway」らグラスチューンの、快速でバリバリ弾きまくる Kaufman の勇姿だろう。本当に、チョー気持ちいい!! なのである。それから、ボーカル入りのナンバーも4曲あって、これらもオールドジャズ風味のアコースティックスウィングという趣で、なかなか捨て置けない。
ギターの至福が18曲・1時間びっしり詰まったこのアルバム、なんだかな〜のジャケットデザインはさておいて、大絶賛です。大型販売店でもなかなか流通してないけど、プー横丁あたりの違いの判るストアでゲットすべし。